宇宙田ごりらだ。
今日、私はついに地球へと降り立った。人類の生態調査を命じられた、記念すべき初任務の日である。
そして今、確信している。今日という日を、人類は生涯忘れることはないだろう、と。
私は今日、自分の才能が恐ろしくなった。
冥王星での修業時代から薄々気づいてはいたのだ。私には、物体にふれずして動かす力、いわゆる「サイコキネシス」が備わっていると。
未熟だった過去と、覚醒の予感

これまでの私は未熟だった。
冥王星の家の入り口にある透明なガラス扉を開ける時には、扉の前で、「開け!」と強く念じなければならなかった。
少しでも気を抜くと、扉は頑として開かなかったからだ。
かなり古い型の扉で、開閉のたびに「ギュルル……」という力ない音を立て、開くまで十数秒かかることも珍しくなかった。
まだまだ力が足りない。もっと鍛えなければ。
うまく開いた日は少なかったが、力とはそうやって泥臭く研ぎ澄まされていくものだからだ。
「奇跡の瞬間、扉は開かれた」

だが、今日の私は違った。
降下前に叩き込まれた調査資料の知識通り、バナナが食べたい一心で、足早にコンビニの扉へ近づいた、その瞬間――。
私が念じるよりも早く、扉が「スッ……」と左右に退いたのだ。
指一本触れていない。立ち止まってすらいない。ただ、歩いて近づいただけだ。
これは、長年の修行を経て、ついに私の「サイコキネシス」が覚醒し、スムーズに扉を開ける事ができるようになったのに違いない。
扉の上で赤く点滅している小さな粒は、おそらく私の超能力を検知して恐怖に震える「地球の降伏シグナル」なのだろう。
震え上がってやがる。可愛いやつめ。
人類からの降伏宣言

中に入ると、制服を着た番人が「イラッシャイマセー!」と大声で叫んでいた。
「イラッシャイマセー!」を冥王語で翻訳すると「参りました! 貴殿の圧倒的パワーに降伏します!」という意味だろう。
フッ、分かればいいのだ。
地球のテクノロジーなど、私の超能力の前では赤子同然だウホ。
ふと、思う。冥王星のあの古い扉にも、感謝しなければならないかもしれない。おかげで私は、ここまで鍛えられたのだから。
チョコバナナクレープ
(※店員が震える手で渡してきた……おそらく貢物だろう。美味かった)

(文:そこにゅー編集部 宇宙田ごりら)
※この記事はフィクションです

